iPad for お絵描きのススメ

iPad for お絵描きのススメ

2020年12月16日

私は趣味レベルではありますがデジタルイラストを描いています。iPadで。

ものすごく快適で困ったことはありません。

数年前までは「デジタルでイラストを描くなら?パソコンとペンタブか液タブ(液晶ペンタブレット)を買え!」というのが当たり前でしたが最近はそんなこともなく、ツールの候補の中に当然のようにiPadも挙げられます。

プロのイラストレーターでも「全てiPadで作画しています!」という方もいらっしゃるみたいで「すげぇ時代だな!」って感じ。

iPadは「画面が綺麗!」「筆圧検知もある!」「持ち運びも簡単でどこでも環境を変えずに描けちゃう!」

…1億総イラストレーター社会も近いね。

でもそんな状況だからこそ「イラスト目的でiPadを買いたいけどどれを買えばいいの?性能差はどうなの?」とこんな声もあるのではないでしょうか。

わかるわかる…なんだかんだiPadは種類が多くてよくわかんないよね。

そんなわけで今回は少しでもそんな方々の助けになればと思い、「できるだけわかりやすくイラスト目的でのオススメのiPadについて話すぜ!」という趣旨でつらつらと綴っていきます。


比較対象について

まず、今回比べていくiPadたちは全て「現行機」とさせていただきます。型が古いものには触れません。

理由は主に「保証の有無」

今「どのiPadを買うか」を悩んでいる方々はiPadを買った後は3年くらいはそのiPadにお世話になると思います。(毎モデル買い換える人なんて…いないでしょ)

その3年間の中でもしiPadに不具合が出てしまったら?もし落としたりして画面が割れてしまったら?ということを考えた時、やはり新品購入で保証があったほうが安心してお絵かきができるんじゃないでしょうか。Applecare+(Appleの延長保証)をつけるとなお精神衛生上良いと思います。

型落ち機種は基本的に中古で保証がないですし、種類が多くて考えるのがめんどくさくなっちゃうので忘れましょう。

そんな理由から私は「現行機」を「新品」で買うことをオススメします。新品であればAmazonでも家電量販店でもApple care+をつけることができます。(型落ちにApplecare+をつけることができるケースもありますがそれは今回は割愛します。どうしてもという方はTwitterか何かで聞いてください)

(そもそも型落ち含めてどの機種が良いかわかる方はこの記事読まなくてもいいでしょ)

万が一の時の修理代金を知りたい方はAppleさん公式サイトを見てみてください。

参考:iPadの修理(Apple公式)


スペック早見表(イラストに関係ある項目のみ)

それでは「イラストに関係がある機能に絞って」今回比較するiPadたちのスペックを並べてみたいと思います。

機種iPad Pro(大)iPad Pro (小)
ホームボタンの有無×(顔認証)×(顔認証)
SoCA12Z BionicA12Z Bionic
画面サイズ12.9インチ11.0インチ
リフレッシュレート120Hz120Hz
フルラミネーション
P3
True Tone
Apple pencil第2世代第2世代
コネクタUSB-CUSB-C
容量128GB、256GB、512GB、1TB128GB、256GB、512GB、1TB
税込価格
(Wi-Fiモデル)
115,280~
175,780
93,280~
153,780
表1
機種iPad AiriPad
ホームボタンの有無×(電源ボタンで指紋認証)
SoCA14 BionicA12 Bionic
画面サイズ10.9インチ10.2インチ
リフレッシュレート60Hz60Hz
フルラミネーション×
P3×
True Tone×
Apple pencil第2世代第1世代
コネクタUSB-CLightning
容量64GB、256GB32GB、128GB
税込価格
(Wi-Fiモデル)
69,080~
87,780
38,280~
54,780
表2
機種iPad mini
ホームボタンの有無
SoCA12 Bionic
画面サイズ7.9インチ
リフレッシュレート60Hz
フルラミネーション
P3
True Tone
Apple pencil第1世代
コネクタLightning
容量64GB、256GB
税込価格
(Wi-Fiモデル)
50,380~
69,080
表3

各項目の説明

・ホームボタンの有無

これはそのままですが、端末デザインの話でもあります。

ホームボタンがある機種については「THE iPad」というデザインです。ディスプレイの上下に太い枠があって、下の枠にホームボタンがあるタイプ。

ホームボタンがない機種はディスプレイの四方の枠が細く、大きなディスプレイがあるタイプ。「新しめのiPad」ってやつですね。


・SoC

頭の良さとでも思っていただければOKです。強いほど負荷が重いことが出来ます。

今回出てきたSoCで”””強さ”””を比べるなら「A12Z>A14>A12」という順番になります。

とはいえ、イラスト目的で考えるとどれを選んでも快適にお絵かきが出来ます。「一番強い」イコール「一番最適」にはならないということを頭に入れておいてください。


・リフレッシュレート

画面の動きのヌルヌルさ。「1秒間に何回画面を表示をしなおしているか」という数値です。

例えばリフレッシュレートが60Hzの場合は「1秒間を60枚の紙で表すパラパラ漫画」で120Hzは「1秒間を120枚の紙で表すパラパラ漫画」ということです。

分からない?じゃあ違う例えで。

「ボールを投げる」という動作をパラパラ漫画で表す時に「2枚の紙しか使っちゃダメ」という場合は「振りかぶる姿勢」と「ボールを投げきった後の姿勢」の2枚の絵でしか表せません。これが2Hz。

「3枚使っていいよ」となったら、「振りかぶる姿勢」と「投げきった後の姿勢」の間に「ボールが指から離れる瞬間の姿勢」を加えることができます。これが3Hz。

ということは数字が増えれば増えるほど「振りかぶる姿勢」から「投げきった後の姿勢」の間を細かく補完することができるわけですね。そして細かく補完したパラパラ漫画ほどヌルヌル動いているように見える、ということですね。…いいね?

要は数字が大きいほどヌルヌルなんです。(思考放棄)

とはいえヌルヌルだとお絵描きに良いことがあるかと聞かれると微妙なところです。

確かにリフレッシュレートが120Hzだと60Hzよりも描画の遅延が少ないです。しかしiPad自体が非常に優秀なので60Hzの機種でもほぼ遅延がないように感じるんです。(スロー撮影等をしてやっと遅延に差があるとわかるレベル)

そのため、リフレッシュレートもあまり重要な要素ではありません。安心して60Hzの機種も候補に入れてあげてください。

ちなみにiPhoneは全て60Hzです。


・フルラミネーション

液晶ディスプレイとディスプレイ表面のガラスをほぼ一体化させる技術のことです。

これが施されているとペン先と実際の液晶の描画位置が近くなります。これによって気持ちよく、そして思った場所に線を引きやすくなります。

フルラミネーションディスプレイではない機種はペン先と実際に描画される液晶の間に1枚のガラスを挟むことになりますので、ペン先と描画位置に微妙に距離があるように見えてしまいます。とはいえ耐えられない程ではありません。(実際フルラミネーション非搭載機種で描いている神絵師もいらっしゃいます)

個人的には割と重要な要素だと思っているので、これは是非家電量販店等で比べてみてください。


・P3

Appleが作った色空間。

これに対応していると対応していない機種より「よりたくさんの色を正確に表現することができる」と考えていただければOK。

とはいえ対応していなくてもほぼ問題ありません。「描いた作品をアナログ媒体に印刷したりする方」は重視した方がいいかも。


・True Tone

どんな環境でも正しい(?)色で色を表現してくれるという技術です。

白い紙でも暖色系のライトがついた部屋で見るとちょっと暖色チックに見えるでしょ?ああいう環境でも正しい色になるようにiPad側が色調補正してるというものです。

でも正直なくてもいいです。True Toneがあることで逆に違和感が…ということも多々あるので…。

これは重視しなくていいです。


・Apple Pencil

画像左が第二世代。右が第一世代。

第二世代はペンのどこかをポンポンとダブルタップすることで消しゴムツールに変更できたりとペンに設定を仕込むことができます。

充電方法も違います。

第二世代はiPadの側面にマグネットで貼り付けることで充電が始まります。第一世代はペンのおしりの蓋を取るとLightning端子が出てくるのでそれをiPadに差し込むか、変換アダプタを介してLightningケーブルで充電という形になります。

主に違うのはそれくらいです。その為「こっちのPencilが使いたいからこのiPad!」という決め方はおすすめしません。PencilでiPadを選ぶのではなく、まずiPadを選んでその後に対応するPencilを何も考えずに買いましょう。


・容量

そのままです。しかしiPadを何に使うかで必要な容量は変わってきます。

「イラストだけにしか使いません!」という方は32GBでも十分です。

「iPadの大画面でゲームとかしたいぜ!」等の他の色々なアプリを入れたいという方は最低でも64GB…複数のゲームを掛け持ちしている方は128GBあると安心だと思います。

256GB以上はお好みです。ここは自分の用途をよく考えて選びましょう。


以上がイラストに関するであろう機能の説明となります。(画面サイズとコネクタはそのままなので割愛)

これらの機能がどのようなものか。どの機種がどの機能を搭載しているかをしっかり知っておくことで自分に合うiPadを選ぶことができるのではないでしょうか。


オススメランキング

ここからは個人的に「これを買っておけば良いんじゃないかな」というモノサシでランキングを作りましたので発表します。

あくまで個人的な考えのもと作成したものなので、鵜呑みにせずに「どのiPadが自分に合っているのか」をしっかりと考えましょう。


1位「iPad Air」

ホームボタンの有無×(電源ボタンで指紋認証)
SoCA14 Bionic
画面サイズ10.9インチ
リフレッシュレート60Hz
フルラミネーション
P3
True Tone
Apple pencil第2世代
コネクタUSB-C
容量64GB、256GB
税込価格
(Wi-Fiモデル)
69,080~
87,780
iPad Airのおさらい

価格も含め全てが優等生。

非の打ち所がないです。私は今からお絵描き目的でiPadを買うならノータイムでこれを買います。

ホームボタンはありませんが、生体認証が電源ボタン一体型の指紋認証なので出先で落書きをする際にも便利です。

リフレッシュレートは60Hzですが先程も書いたとおりイラスト用途ならデメリットにはなりません。

一番安くて69,080円。予算が許すのではあればこれを買っておきましょう。


2位「iPad Pro 12.9インチ」

機種iPad Pro(大)
ホームボタンの有無×(顔認証)
SoCA12Z Bionic
画面サイズ12.9インチ
リフレッシュレート120Hz
フルラミネーション
P3
True Tone
Apple pencil第2世代
コネクタUSB-C
容量128GB、256GB、512GB、1TB
税込価格
(Wi-Fiモデル)
115,280~
175,780
iPad Pro 12.9インチのおさらい

「ディスプレイの大きさ」という唯一無二のメリット。

ディスプレイが大きいということは作業領域が広いということ。これは他にはないメリット。作業領域が広ければ大きなストロークで描くことができますので綺麗な線がひきやすいです。

お絵描きをする中で余計なストレスを感じたくないという方はこれにしておきましょう。

デメリットはその価格。一番安くても11万円を超えてきます。検討する方はお財布や口座と相談して決めましょう。


3位「iPad」

機種iPad
ホームボタンの有無
SoCA12 Bionic
画面サイズ10.2インチ
リフレッシュレート60Hz
フルラミネーション×
P3×
True Tone×
Apple pencil第1世代
コネクタLightning
容量32GB、128GB
税込価格
(Wi-Fiモデル)
38,280~
54,780
iPadのおさらい

エントリーモデルにしては快適な描き心地。

特筆すべきはその価格。安い。それでも快適にお絵描きができちゃうんだからすごいぜ。

「とりあえずこの無印iPadを買っておいて、段々成長してきたらAirやProに移行。そして無印はサブ機へ」という流れも全然アリ。最初からAirやProを買ったにも関わらず「飽きた!」とかなったら目も当てられませんからね…。

個人的にはフルラミネーションディスプレイ非採用なのが気になりますが、ここは個人差です。検討されている方は家電量販店でペン先と描画位置がどの程度離れているのかを見てみてください。(斜めから見るとわかりやすいかも)


4位「iPad Pro 11インチ」

機種iPad Pro (小)
ホームボタンの有無×(顔認証)
SoCA12Z Bionic
画面サイズ11.0インチ
リフレッシュレート120Hz
フルラミネーション
P3
True Tone
Apple pencil第2世代
コネクタUSB-C
容量128GB、256GB、512GB、1TB
税込価格
(Wi-Fiモデル)
93,280~
153,780
iPad Pro 11インチのおさらい

完全にAirに食われてしまったモデル。これを買うならAirにしておきましょう。悪いことは言いません。

Airより0.1インチだけ画面が大きくて、リフレッシュレートが120Hz。それだけで2万円ちょっと価格が高いです。

イラスト関連以外のスペックでならAirに勝っている点があるのですが、今回はイラスト視点の話。

もう一度言います。イラスト目的でiPadを考えているならこのモデルはやめておきましょう。


ランク外「iPad mini」

機種iPad mini
ホームボタンの有無
SoCA12 Bionic
画面サイズ7.9インチ
リフレッシュレート60Hz
フルラミネーション
P3
True Tone
Apple pencil第1世代
コネクタLightning
容量64GB、256GB
税込価格
(Wi-Fiモデル)
50,380~
69,080
iPad miniのおさらい

人によって順位が変動する特殊なモデル。

「iPadの中から初めての1台を選ぶなら」というテーマならこのモデルはオススメできません。流石に画面が小さすぎます。

しかし既にどれかのiPadを持っている方に対してはこの小ささは大きな武器になるのではないでしょうか。ちょっとしたお出かけ用のサブ機だったりと既にあるお絵描きライフをよりよいものにしてくれるキラーアイテムになり得ます。

このように人によって1位にもなるし最下位にもなる機種であり、個人で順位をつけることができないモデルのためランク外にさせていただきました。


まとめ

「メディア消費用のツール」として考えられていたiPadの進化などによって整えられつつある「デジタル創作をしやすい環境」

そしてTwitter等の「SNS」の発達

これらのマリアージュによって多くのクリエーターの方々が登場し、ネットの世界を彩っている昨今。

探せば自分好みの作品を創るクリエイターの方もたくさんいて、自分が創作なんかしなくても超好きな作品がたくさんあって良い世の中になりましたね。

本当に?

100%自分が求める作品を作っているクリエイターはいますか?

いないでしょ?

自分が創るしかないんですよ。自分が100%求める作品なんて。

じゃあ買うしかないっしょ、iPad。

さぁ、世界を創りにいこうぜ。